さぬきひとくち話 第7回
今回は、ちょっとおめでたい話。
<エビのいわれ>
昔、エビはまっすぐだった。ところが・・・
むかし、むかし、満濃の山奥に自分ほど大きいて強い生き物はおらんやろう、とうぬぼれている大きな鷲がおった。そやからいつもいばってばかりじゃった。
ある日、ぐんぐんと瀬戸の海まで飛んでいっったんじゃや。
真ん中まで来たあたりで、ちょっとつかれてしもうた。ふと下を見ると大きなふっとい柱が海からつきでとる。
「こりゃ、一休みにもってこいじゃ。」とその柱にとまったら、柱がグラグラっとゆれて、海のなかから
「だれじゃ! ワシのヒゲに黙ってとまるんは?」という声がした。
見ると、それは大きな大きなエビじゃった。ふっとい柱じゃ思ったんは、ほんまはエビのヒゲじゃったというこっちゃ。
鷲は恥ずかしくなって逃げていった。エビは得意じゃった。
ところが、ある日、そのエビがちょうどええあんばいの洞穴で 休もうとしたところ急に洞窟がグラグラ揺れた。「地震や! 逃げないかん!」と思うまもなくエビは
渦巻いた水に巻き込まれて、天高く空へ吹き上げられてしもうた。
洞窟じゃ、と思ったところはこれまた大きな大きなマグロの鼻の穴やったんじゃ。
いきなりエビに鼻をくすぐられたもんじゃから、マグロはくしゃみをしたんじゃな。
エビがどうなったか、って?
かわいそうに、運悪く、エビの落ちてきたところには、大きな大きな岩があってのエビはそこへ腰をぶつけてしもた。おかげでそれまでまっすぐやったエビの腰は曲がってしもうて、とうとう治らなんだ。それ以来海老のコシは曲がってしまい今の姿になった、ということじゃ。
湯がいたエビが赤いのは、その時のことを思い出して恥ずかしゅうなるからやな。
讃岐の民話より